7章 エデンの生活たち 靴磨き編

とりあえず、自分の趣味を活かし、お金を稼がなくとも楽しみ、現地の方と交流できることをしたいと考え、日本から持ってきていた自分の革靴磨きセットを取り出した。

よしフリー靴磨きをしよう。ということで、知らない人に靴磨きをするってことをわからせるための看板を作らねば!というわけで、ペンすらないので、ペンを買いに行く。しかし、文房具屋がどこにあるのかわからない。

街をふらふら徘徊しているとちっさな文房具屋を発見。どうせ大して使うことの無いペンなので、安いやつを購入した。ペンを手に入れたので、次はダンボール的なやつにメッセージとコンセプトを書きたい。

というわけで、文房具屋の店主にダンボールがないか聞き、適当なサイズのダンボールを無料でもらった。

「無料で靴磨きします。気に入ればなんか下さい。」とだけ書いて準備万端。

早速行動に移る。

家の近くにある。超巨大な公園(多分東京ドーム4個分位)へ行く。香港は土地が狭く、地価が非常に高いが、公園などはめちゃめちゃ充実している。

その公園は運動器具やプール、サッカーコート2面、バスケコート4面、テニスコート6面、スケートリンク、ジョギングコース、なんならラジコンボートを自由に操縦できるための池なども用意されている。とんでもない広さの公園なのである。

まずはそこの遊歩道に陣取り、来る人に声をかけず、立札(自分で作ったダンボール)をみてもらうことに専念した。

声もかけやすいように、人が来るたびにずっと自分の革靴と財布を磨いてアピールしていた。

とりあえず二時間が経ち、全く人が反応しないことに気がついた。

外国でもこういったものは受け入れられないのだろう。自分から声をかけて行く必要があるのかもしれないと感じた私は、来る人来る人手当たり次第ガンガン声をかけまくった。

そして、何十人目かの人に声をかけた時にようやくポジティブな反応があった。

「君は何をしているんだい?」

「僕は無料で靴磨きをしているんだ。」

「そりゃいいね。」

「もしよければあなたの靴磨くよ。」

相手の足元を見ると。自分の大きなミスに気がつく。

まさかのビーチサンダルだ。革でもないし、磨けない。。

結局その人とちょっと話すことになり、フィジーに住む旅行者だということがわかった。フィジーでレストランの店員をしていて、香港で開かれるラグビーの選手権を見にきたらしい。

ちょっとのつもりが、かなり長く話をしてしまい、かなり仲良くなれた。

フィジーにきた際は案内するからと言い、彼は五つ星ホテルに帰っていった。

今日一日中外にいて、靴磨きをする場所が悪いことに気がついた。明日はビジネス街に進出しよう。そう思い、疲れ切った体を引きずりながら自宅へ戻った。

次の日、奥さんを仕事に見送った後、いつものトラムに乗り、セントラルというビジネス街に向かう。とはいえ時間帯が重要だ。多くの人が昼食の時間に休憩するであろう公園に陣取り、昼前から待機する。

一時間以上進展がなく、今日も不発か。。

そう思っていると、1人のいけてるカッコをした香港人に話しかけられた。

「仕事を探しているのかい?」

「そうなんだけど、まだIDがなくて」

「なるほど、だから靴磨きか」

「無料だしやってみる?」

という流れで、靴磨きについに着手することができた。慌てて焦った僕は思いの外丁寧な靴磨きができなかった。

靴磨き中は、彼の仕事の話をした。

どうやら証券会社に勤めているらしい。かなりイケイケでリッチな感じがした。

靴磨きが終わった後に

「いくら払えばいい?」

「お金はいらないよ」

「いやそういうわけにはいかないから」と無理やり香港50ドルを渡された。

本当にいらないと返したが、受け取ってもらえず、彼は拒絶したたまま颯爽と去っていった。

これが1000円の価値。まだ香港にきて間もないが、自分なりにもがき苦しんで手に入れた最初のお金。

これは大切にしよう。ということで、この頂いたお金は今だに自宅の写真たての中に入れて自分の戒めとして大切に保管している。

お金を稼ぐというのは、どのような形であれとても大変だ。

特に自分が選択し、行動して手に入れるというのは、本当に難しいことなのだと実感した。

今までは、ただ指示された仕事をして、それを繰り返し自動的に給料が銀行口座に振り込まれていたが、会社や社会の歯車の中から外れた後では、自身の力で手に入れなければならない。

お金を手に入れる難しさ、そしてお金の価値に向き合った1日になった。

コメント

タイトルとURLをコピーしました